人間は現金である

僕は人付き合いが苦手だ。


こういう人はきっと多いんだろうと思う。誰だって見知らぬ人と会話するのは勇気がいるし、気の置けない仲の知人など数えるほどしかいないんじゃないかな。


それでも僕は特に苦手な部類に入ると思う。なんつーか、苦手を通り越して人付き合いをする事が不可能なんじゃないかってくらいダメダメなのだ。とにかく知らない人に話しかけるのが苦手で、話しかけられても必要最低限のことしか喋らない。出来ない訳じゃないのにやらないのだ。いや、やる事が出来ないのだ。会話は出来る、でも会話に積極的に参加するのが人並みに出来ない。


しかし僕は人生を投げ捨てず生きている。ある程度投げちゃってはいるけど、世を儚んで自ら命を絶ってしまうほどこの世に絶望していない。何故なら人付き合いは苦手だが、イコール人間が嫌いではないからだ。


今朝は小雨が降りっぱなしで、外で仕事をしなければならない僕は地獄を見た。かかった時間がいつもの2割増でした。「くそー、水不足になんかなってないんだから降るんじゃねえよばかやろう、死ねこんちくしょう」などと独りごちてやり場のない怒りを溜め込んでいました。


帰宅後にテレビを観ますと、イチロー選手が更に安打の記録を伸ばし、今シーズン262本という大記録で幕を下ろしたというニュースを報じておりました。野球に興味のない人たちがとんだ祭り騒ぎです。敵チームのファンですらイチロー選手の偉大な功績を讃えスタンディングオベーションです。


なんともまあ、人間というのは現金なものです。何か皆で祝えることがあれば、手を返したかのように自分も仲間であるかのように振る舞い、そして自分の喜びに変換しているのです。かくいう僕も例外ではなく、先程までの怒りは何処へやら、素直にイチロー選手の大記録に感動しておりました。


話はがらっと変わりますが、今朝の渋谷駅前で缶コーヒーを無料配布していました。新商品のPRなのでしょう。普段はティッシュやチラシを配っている人を脇目に素通りしてしまうところですが、今回ばかりは並んででも手に入れてきました。他にも同じように並んでいる人がいたということです。


本当に人間は現金ですね。自分にとって必要のないものであれば興味を示さないのに、欲しいと思ったらいつものポリシーなど置き去りにしてそれを手に入れることに手段を選ばない。


無料で貰っておいて紹介しないのもなんなので。ネスカフェの「サンタマルタ フォーアップ」ってコーヒーです。一緒に貰ったちっちゃいチラシにURLも書いてありました。
http://jp.nescafe.com/
飲んだ感想:とりあえず苦かった。だけど割と美味い。コーヒー中毒のくせにブラックが全然飲めない人で苦いのは苦手なんですが、それなりに飲める感じで。まあカフェオレのような砂糖とミルクが多めに入ってるのが好みなんで、買うことはあまりないでしょうけど。配布してたお姉さん、ごめんなさい。


やっぱ一流企業は違いますよね。先週の深夜の馬鹿力じゃありませんが、お姉さんのレベルが高いですよ。じゃなくて、缶コーヒーを無料配布なんて豪気な宣伝が出来るなんて、余程の資金力が無ければ出来ませんからね。


閑話休題。上記の2例のように、現金だからといって人間を否定する気はさらさらありません。むしろそれでこそ人間なのではないでしょうか。今回の事例は小さいことです。イチロー選手の記録は大したものですが、それでも国を挙げて祭り上げるほどの事例ではありません。まあ野球ファンとしてはそれくらいやって欲しいくらいですけども。


ともあれ、小さいことはもちろん大きいことでも自分の目的達成のために尽力する。その前向きな行動力こそ、ここまで文明を発達させてきた人類の偉大な功績であるのは自明の理です。人は生きるために何かに興味を示し、その何かが人類の発展に貢献できるものであったから現在の社会があるわけです。


そんな人間が僕は嫌いではありません。いや、むしろ好きだと言っていいでしょう。ただ生きるためだけに生きるより、よりよい生涯を送るために努力を惜しまずひたすら前向きに生きる、そんな人間が僕は大好きです。今は特に田村ゆかりさんが好きです。ええ、蛇足ですとも。


とまあ、そんな事を考えながら傘を差しつつ横断歩道を渡ろうとしたところ、同乗者と話をしながらで気もそぞろに運転しているバカが乗った車がほとんど減速しないで突っ込んできやがりまして、咄嗟にそれを避けた僕は濡れたアスファルトの上にすっころんでしまいました。くそっ、人間なんて嫌いだ、とっとと滅んでしまえばいいんだ。