先輩と部下

「なあ、お前何か悩みでもあるんじゃないか?」
「えっ、別に悩みなんてありませんよ?」
「隠すなって。俺にはわかる。さあ、言ってみろ」
「だから無いって言ってるじゃないですか」
「お前も頑固だなあ。誰にも言わないから安心しろ」
「じゃあ言い方を変えます。あるにはありますが、先輩には言えない事なんです!放っておいてください!」
「っ!てめー、なんだその言い草は!」
「先輩もおせっかいが過ぎるとかえって迷惑ですよ!」
「俺はなあ、お前のためを思って言ってんだよ!どうしてそれがわかんねーんだ!」
「それが余計なお世話だっていうんです!」
「・・・そうか、そんなに俺は信用がないのか・・・」
「そうやって被害者ヅラしても駄目ですよ」
「んなこと考えてねーよ!」
「そうですか?本当は人格者気取りたいだけじゃないんですか?」
「お前が何を邪推しようと勝手だがな、そういう事は口にするもんじゃないぜ」
「あーあー、そうですねー。私がわるうござんした。申し訳ありませんねー、バカなもんでー」
「・・・なあ、一度殴っていいか?」
「ハッ!何をおっしゃるかと思えば・・・良いなんて言うと思います?」
「イチイチ癇に障る奴だな・・・そんなに気にいらねーのか、俺の事が」
「ええ」
「ほほう・・・」
「私の悩みはですね・・・先輩がうざったくてしょーがないんですよ!」
「んだと!信じられない奴だな!」
「信じようが信じまいがお好きにどうぞ!私もう帰りますよ!」
「話はまだ終わってねえ!」
「私はもうお話しすることなんかありません!」
「いや、俺にはあるんだ。聞け」
「・・・いいでしょう、それが終わったら帰りますからね」
「ああ、好きにすればいいさ」
「で、何なんですか?」
「大事な事なんだ。よく聞いてくれ」
「だから何なんですか?」
「実はな・・・お前の机の上にあったチョコ食べちゃった」
「・・・へ?」
「いやな、一昨日美味そうなチョコが置いてあったからさ、ついつい」
「ついついじゃないですよ!泥棒じゃないですか!」
「すまん、給料日前だから金がなくて」
「あああああ、だから彼女あんなに怒ってたのかぁぁぁ・・・」
「悪気はなかったんだ」
「関係ないですよ!どうしてそんな大事な話を早く言わないんですか!」
「言えなくってさ・・・悩んでるんじゃないかって」
「うっわ、ひでえ!この人最低だよ!」
「人が謝ってんのにそこまで言うか?」
「謝って済むなら警察はいらないでしょうが!」
「人が下手に出てりゃーいい気になりやがって・・・弁償すりゃいいんだろ!」
「逆ギレなんて最悪ですね!お金で買えない価値がある、priceless!とか聞いたことありませんか?」
「ふん、どーせ1,000円かそこらだろ!ほれ、受け取れ!」
「そういう問題じゃありません!人をなめるのも大概にしてくださいよ!」
「うるせーな、男ならンな小さい事をいつまでもうじうじ言ってんじゃねーよ」
「あ"あ"あ"もうこの人は・・・いいですよ、そっちがそうくるならこっちにも考えがあります」
「なんだよ」
「窃盗罪で通報します」
「おいおい待てよ、そんな大げさな話か?」
「大げさですよ!私の人生がかかってると言っても過言じゃありませんから」
「ちっ、じゃあどーすりゃ良いってんだよ」
「そうですね・・・とりあえず土下座してください」
「なっ?!」
「嫌ならいいんですよ?えーっと、電話電話っと・・・」
「お前、それ脅迫って言わないか?」
「言いませんよ?そもそも悪いのはそちらですよね?」
「くそ、もういいよ、好きにしろや!」
「そうですか。残念です、先輩とはもうお別れですね」
「くっ・・・」
「1、1、0、っと・・・あ、もしもし」
「うおおおおおおお!!」
「がっ?!」
『もしもしどうされまし』ガチャ───ツーツー
「お前が・・・お前が悪いんだからな!」


ってな殺人劇がどっかで行われてやしねーかな。
なんて不謹慎な。