作成日:2004/09/30

ボクが本気で殺したいと思った人間が2人います。


1人は中学生の時の同級生でした。
当時のボクはいわゆる「いじめられっ子」で、その頃は別にいじめられているとは思わず、くそばかやろうがしょっちゅうちょっかい出してくる、程度にしか思っていませんでした。それを理由に学校を休んだ事はありません。登校拒否など考えた事もありません。むしろ、そんな理由で学校を休んだ日には両親からどれだけ怒られるか想像もつきません。
1年生の頃は、合唱の練習が最中に先生の死角からちょっかい出されて反撃するわけにも行かず、ただ耐えるのみで泣いてしまった事もあります。というか泣いてる奴がいるのに気付かない先生ってどうだろう。仮にボクがいじめに耐えかねて自殺なんかしてしまった場合、記者会見で「私の目にはいじめられているようには見えませんでした」なんて言ったんでしょうね。
ともかくウザくて仕方なかったので消してやろうかと本気で考えたことがあります。最終的には殺す価値もない屑なんか放って置こうという結論に達しましたが。
2年生は別のクラスになりましたが、何の因果か3年生でまた同じクラスになってしまいました。しかも前の席がそいつになってしまい泣きっ面に蜂というかなんというか。
で、ある授業でプリントが回ってきたのですが、ボクが取ろうとした瞬間に手を引いて取れなくしたんですね。そこでボクはぶち切れまして、授業中にもかかわらずそいつの顔面に右ストレートを叩き込みました。その決定的瞬間を先生が見ておらず、殴られてボクに突っかかってくるそいつに「授業中に何やってるの」みたいな注意をしておりました。この学校は目が節穴の先生ばっかりなのか?
それ以降、こいつにあまり手を出すとキレるという教訓を得たのか、いじめを受ける事はなくなりました。


もう1人は父でした。
ボクの父は大変気の短い人で、少しでも自分の思い通りにならない事があるとすぐに暴力を振るう人でした。ボクが成長するにつれ衝突する事も多くなり、殴る蹴るは当たり前、ボクが部屋に閉じこもると部屋のブレーカーを落とし、母が高速道路を運転している車の中でも平気でボクの首を絞め、「そこの線路で特急にでも飛び込んで死んじまえ!」と言われた事もあります。
父の畑仕事を無理やり手伝わされた時、無防備にボクに背を向けて作業している時に横の農具で撲殺してやろうかと思った事があります。しかしこいつを殺したら母や兄弟の今後の人生に多大な影響を与えてしまうと思うと実行できませんでした。
とにかくお世辞にも良いとは言えない家庭環境に耐えかね、高校卒業と同時に上京して逃げてきました。本当は大学に行く筈だったのですが、まあそんな状況でしたからロクに受験勉強も出来ず、見事に浪人する羽目になってしまいました。働きながら受験勉強なんて高等技術がボクには身に付かず、結局大学には行けなかったのですが。


それでもボクが人生をドロップアウトしなかったのには、母の存在があったからだと思います。母は父の愚痴・暴言などを文句の一つも言わずに聞いて、息子のボクが学校帰りにゲーセン通いしていても容認してくれるほど心の広い人でした。良妻賢母というのはあのような人のことを指すのではないでしょうか。


しかし、若者がいとも簡単に人生をドロップアウトしてしまったというニュースを度々耳にします。そういった人たちは、恐らく負の感情を抑制するような環境で育てられていなかったのでしょう。父は前述の通り家庭内では理想的とは言えない人でしたが、対外的には評判の良い人でした。正直者で気さくだったので、町内の何かの班長まで務めていました。そして人様の迷惑になるような事は決してしない人でした。パチンコや競輪が好きでしたが、生活するお金には手を出さない、そういった意味ではけじめのある人でした。つまり、両親ともに人様の迷惑になるような行為はしない人だったのです。そういった両親に育てられたお陰で、ボクは犯罪に手を染めずに今まで生きて来られたのだと思います。逆にドロップアウトしてしまった人たちは、ボクのような観念を身に付けていなかったように思えるのです。


子供は大人の姿を見て育ちます。悪い事はしてはいけないと教えなければ、背徳感が身に付く訳がありません。最近よく見掛けるのですが、子供が騒いでいるのに全く注意をしない親がいます。どういう神経をしているのでしょうか。迷惑をかけていることをまるで悪いと思っていないのです。当然子供は悪いと教えられていませんからそのまま騒ぎ続けます。仮にそれを注意すれば、親は逆ギレするケースも間々見受けられるようです。


大人がこれでは子供が犯罪を犯してしまうのも無理はありません。信号無視する大人を見れば子供だって信号無視をしますし、歩き煙草をする大人を見れば未成年でも煙草を吸いたくなってしまうのも十分考えられますし、ライブドアの社長のように「女は金で買える」といった思考の大人がいれば売春行為に走る女子高生がいてもおかしくありませんし、国益のために戦争を仕掛ける国がある世界で殺人を犯してしまう人がいるのは当然です。


何かというとやれテレビが悪い、ゲームが悪いと言いたがる大人がいますが、責任転嫁もいいところです。子供は大人の姿を見て育ちます。テレビの画面に映し出されるものをそのまま信じ込むほど子供は単純ではありません。実際に自分が目にしたもの、耳にしたものから学んでいくものなのです。それこそ責任転嫁をしたがる大人ほど、子供にとって良い手本になり得ない行動をしている人間なのではないでしょうか。


現在の社会では悪い見本とでもいうべき人間は沢山います。それを是正しようとしても無理でしょうから、それこそデスノート夜神月のように悪人を消していって理想的な新世界を築こうとでもしなければ実現できないでしょう。勿論そんな力はボクにはありませんし、たとえあったとしてもそんな事をする気もありません。所詮理想は理想であって、現実は知れば知るほど幻滅してしまう程度のものなのです。


こういった考えをしている者は異端と考えられてしまうのでしょうか。もし社会全体が理想とする世界に少しずつ近づいているとすれば、消されるのは悪人ではなくボクのような人間なのかもしれません。